新宿駅から西へ少し歩いた場所に、新宿中央公園がある。
高層ビルが立ち並ぶ西新宿の一角にありながら
昼はランチをする人や散歩をする人でにぎわい、
夜になると、都会の喧騒から少し距離を置ける場所だ。
12月30日 新宿中央公園の夜
新宿中央公園
ビルの谷間にぽっかりと空いたようなこの公園は、
新宿という街の中で、立ち止まることを許してくれる数少ない場所なのかもしれない。
12月30日。
この日は、娘の誕生日だった。
高校二年生になった娘が、
「イルミネーションを見に行きたい」と言ったのがきっかけだった。
特別なレストランでもなく、自分の誕生日に東京へ来た記念として
娘が選んだのが、新宿中央公園だった。
妻と長男、次女も一緒に、家族5人で出かけることにした。
年末の新宿は人が多く、
歩いているだけで少し気ぜわしい。
街全体が「次へ次へ」と急かしてくるような空気だった。
そんな中で、娘はどこか頼もしく
自然と少し前を歩いていた。
その背中を見ながら、もう子どもではないのだな、とふと思った。
新宿中央公園の雰囲気 ー 不思議な静けさで落ち着く場所

新宿中央公園に足を踏み入れると、
周囲の音が少しだけ遠くなった気がした。
高層ビルに囲まれているはずなのに、ここには不思議と静けさがある。
昼間のこの公園は、会社員がベンチで弁当を広げ、
子どもたちが走り回る、日常の場所だ。
でもこの夜は、イルミネーションの光に包まれて、
少し特別な場所に変わっていた。
妻は後ろで次女の手を引き
次女は足元の光を踏まないように気をつけながら歩いている。
長男はスマホを見つつも、時々顔を上げて周囲を見渡していた。
それぞれが自由で、
それぞれが同じ場所にいる。
そんな距離感が、
今の我が家らしい気がして、悪くなかった。
イルミネーション

公園の中で、
グリーンに光る 「SHINJUKU CHUO PARK」 の文字を見つけた。
娘は立ち止まり、「思っていたよりも広くイルミネーションがあるね。」と言った。
その言葉に、
少しだけ大人びた感じがして、
高校二年生になったのだと改めて思う。
文字の周りには、
数えきれないほどのイルミネーションが木々を包んでいた。
白や青、暖色の光が混ざり合い、
派手すぎないのに、確かに華やかだった。
所々に置かれた動物のオブジェに、
次女が反応して足を止める。
「見て、あれも光ってる」
それに付き合いながら、
長男が写真を撮っていた。
中央公園の階段では、
虹色の光が流れ、
「TWINKLE PARK」 の文字が浮かび上がる。
階段を上るたびに表情を変える光が、
歩く速度を自然とゆっくりにしてくれた。
娘は少し離れた位置で、
その光をじっと眺めていた。
声をかけるでもなく、
ただ見ているその姿が、
この夜の印象として残っている。
新宿の夜景

公園を抜けると、
視界が一気に開け、新宿の街並みが現れた。
ビルの灯り、絶え間なく行き交う人、止まることのない街の光。
すぐ近くの新宿住友ビルの前、三角広場でも、
いくつものイルミネーションが輝いていた。
家族連れやカップルの姿が多く、
それぞれが、それぞれの年末を過ごしているようだった。
家族5人で並んで歩きながら、
会話が途切れる時間もあった。
でも、それは気まずさではなく、
同じ景色を共有している安心感に近いものだった気がする。
誕生日だからといって、家の中でプレゼントを渡し
ろうそくを吹き消すような時間もなかった。
ただ、家族で夜の公園を歩き、同じ光を見ただけだった。
それでも、高校二年生になった娘が、
この場所を選び、この時間を家族で一緒に過ごしたいと思ったこと。
そのこと自体が、十分に特別だったのかもしれない。
年末の冷たい空気の中で、新宿中央公園の光は
静かに、やさしく灯っていた。
きっといつか、この夜のことを思い出す日が来るだろう。
そのときも、この光の感じを頭の片隅には覚えているに違いない。
